ボイストレーニングの世界でよく使われている単語に「ミックスボイス」という言葉があります。
この言葉がなかなかに曲者で、人によって意味が変わったりします。
今回は「ミックスボイス」について考えていきます。
「ミックスボイス」の様々な定義
ざっと調べてみるとこんな感じで、いろいろな定義や宗派があるようです。
- 声区転換をなめらかにすることで得られる声色
- 高音域を地声のような音色で出すこと
- 地声と裏声が混ざったような中間の音
- 地声に裏声を足した音
- 裏声に地声を足した音
- ミドルボイスと同義
- ミドルボイスとは区別される
「ミックスボイス」という種類の声があるわけではない
ボイスなんて名前がついているので、地声・裏声と並ぶ第三の声みたいな誤解が生じやすいですが、
(少なくとも私の認識では)そういう声区があるわけではありません。
声区の文脈において重要となる筋肉には、
主に低音域(地声)で働く甲状披裂筋と、
主に高音域(裏声)で働く輪状甲状筋の2つがあります。
この2つの働く比率が、例えば地声だと甲状披裂筋:輪状甲状筋=8:2とかになったりします(数値は適当です)。
これらの筋肉のコントロールがうまくできて、
例えば筋肉の状態を7:3→5:5→3:7のようにスムーズに移行できると、
声区が融合したかのように聞こえるのです。
つまり「声区(地声と裏声)の切り替えが聞き手にわからない状態」が歌にとって理想的な状態で、
それに名前をつけたところ「ミックスボイス」とか「ミドルボイス」とかいうことになったのだと思います。
別に切り替わる感覚があってもいい
ミックスボイスの感覚をつかんだら、
悟りを開いたように声区の切り替えの感覚がなくなるみたいなことがよく言われています。
確かにうまく切り替えることができると、
その感覚やそのときに地声か裏声かどちらを出しているのかの感覚がなくなることはあります。
ただそれができても、私の場合は「これがミックスボイスだ」と確信したことはなく、
あくまでうまく切り替えているだけという認識です。
聞き手にばれなければ自分の感覚があってもいいんじゃないかと思います。
録音して聞いた感じに不満がないならいいでしょう。
魔法の言葉のように使われている「ミックスボイス」ですが、紛らわしいのであまり使いたくありません…。
参考になれば幸いです。
では