チェスアプリ開発(6) PyOpenGL で盤面を描画

Python プログラムで動かすフェアリーチェスアプリ開発、連載第6回です。

で機能面はある程度整いました。

しかし、現在はコマンドラインでテキストで絵を描いて表示し、ユーザのコマンドで動かしている状態なので、

インタフェース的にもう少し楽しくしたいですねー。

ということで、今回からは OpenGL というものを使って、画面に絵を描いたりマウス入力を受け付けたりできるようにしましょう!


OpenGL とは

OpenGL はコンピュータグラフィックスライブラリのひとつです。

競合は DirectX とか。

Windows と Python で OpenGL をインストールする方法はこちらが参考になります。

WindowsのPythonでOpenGLを使う


ちょっとはまったのですが、ダウンロードしてきた freeglut の中の dll ファイルを C:\Windows\SysWOW64にコピーしてこないと GLUT が認識されないもようです。

私の場合、いろいろいじりすぎてよくわからないんですが、最終的にSysWOW64glut32.dllを入れれば動いてくれました。

ちなみにglut32.dllを取り除くとこんなエラーが出ました。

OpenGL.error.NullFunctionError: Attempt to call an undefined function glutInit, check for bool(glutInit) before calling

これは後述のプログラム中のglutInit()関数を認識できていないことを示します。

何をどこに入れればいいのかはビット数によっても変わってくるみたいなので、

とりあえず当たって砕けろ方式でダウンロードしてきた dll を全部System32SysWOW64にぶち込めば成功した、なんてこともあります。

ちなみに私の実行環境は Windows 10 64bit と Python 3.7.4 on win32 です。


後に Python 3.8.3 / PyOpenGL 3.1.5 に変更するとまた動かなくなってしまいました。

PyOpenGL を公式サイトから直接ダウンロード・解凍して、

OpenGL/DLLS/以下のfreeglut64.vc9.dll, freeglut64.vc10.dll, freeglut64.vc14.dll

System32に入れると動きました。

どれが効いているのかはわかりません。

ちなみに、freeglut32.vc9.dllとかもありました。


ウィンドウ表示

描いた絵を表示する領域を作ります。

main.py
1
from OpenGL.GL import *
2
from OpenGL.GLUT import *
3
 
4
...
5
 
6
WSIZE = 720 # 画面サイズ
7
 
8
...
9
 
10
class Game():
11
def __init__(self):
12
...
13
self.glmain()
14
...
15
def main(self):
16
# while True
17
...
18
...
19
def draw(self):
20
'''描画コールバック'''
21
glClearColor(0.6, 0.4, 0.2, 1.0)
22
glClear(GL_COLOR_BUFFER_BIT)
23
 
24
def glmain(self):
25
glutInit(sys.argv)
26
glutInitDisplayMode(GLUT_DOUBLE | GLUT_RGBA) # 表示設定
27
glutInitWindowSize(WSIZE, WSIZE) # 画面サイズ
28
glutInitWindowPosition(0, 0) # 画面の表示位置
29
glutCreateWindow(b'Chess') # ウィンドウの名前
30
glutDisplayFunc(self.draw) # 描画
31
glutMainLoop()

何をやっているのか詳しく知りたい方は、こちらのサイトなどをご覧ください。

はじめての OpenGL

glutMainLoop()がループ処理をしてくれるので、main()内のwhile文は不要になります。

これで茶色い画面が表示されるはずです。


盤面の描画

チェス盤、いわゆるチェッカーボードを描くために、ちょっと準備がいります。

四角形の描画

とりあえず、新しいファイルを作り、四角形を描画する関数を定義します。

utils.py
1
from OpenGL.GL import *
2
from OpenGL.GLUT import *
3
 
4
def square(x, y):
5
'''
6
正方形を描画する
7
8
Parameters
9
----------
10
x, y : float
11
中心の座標.
12
'''
13
glPushMatrix() # 変形が及ぶ範囲の開始
14
glTranslate(x, y, 0) # 以下の対象を平行移動
15
glBegin(GL_QUADS) # 四角形の描画を宣言
16
glVertex(-1.0 / 2, -1.0 / 2) # 頂点1の座標
17
glVertex(1.0 / 2, -1.0 / 2) # 頂点2
18
glVertex(1.0 / 2, 1.0 / 2) # 頂点3
19
glVertex(-1.0 / 2, 1.0 / 2) # 頂点4
20
glEnd() # 描画終了
21
glPopMatrix() # 変形が及ぶ範囲の終了

glPushMatrix()glPopMatrix()行列スタックを扱う関数なのですが、

コメントにあるぐらいの理解で使っています。

これがないと変形(glTranslate()とか)が後ろの図形にまで及んでしまいます。

あと、座標ですが、特に指定しない限り画面は左下(-1.0, -1.0)、右上(1.0, 1.0)となっています。

とりあえず、これを使って四角形を表示してみましょう。

main.py
1
from utils import *
2
 
3
...
4
 
5
class Game():
6
...
7
def draw(self):
8
'''描画コールバック'''
9
glClearColor(0.6, 0.4, 0.2, 1.0)
10
glClear(GL_COLOR_BUFFER_BIT)
11
glColor(1, 0, 0) # 色の指定
12
square(0, 0)
13
glutSwapBuffers() # 強制描画

中心に赤い正方形が表示されたと思います。

赤い正方形

さて、チェス盤は 8x8 の計 64 の正方形が並んでいるので、大きさを合わせていきたいのですが、

正方形を縮小するという手段の他にも、描画範囲を広げるという手もあります。

フェアリーチェスでは盤面のサイズが広がる可能性が十二分にあるので、そこへの拡張を考えて後者の方法にしたいと思います。

さきほど、特に指定しない限り画面は左下(-1.0, -1.0)、右上(1.0, 1.0)となっていると言いましたが、

glOrtho()を用いてこの範囲を指定することができます。

main.py
1
def glmain(self):
2
...
3
glOrtho(-1.0, 8.0, -1.0, 8.0, -4, 4)
4
glutMainLoop()

これで左下(-1.0, -1.0)、右上(8.0, 8.0)になりました。

赤い正方形左下

この大きさの正方形なら、左下(-0.5, -0.5)、右上(7.5, 7.5)の盤面ができるので、

ちょうどいい感じにマージンもできますね。

互い違いに四角形を配置

チェス盤は暗い色のマスと明るい色のマスが互い違いになって並んでいます。

暗い色のマスの位置を示すリストを利用することにします。

utils.py
1
dark_squares_list = ([(i, j) for i in range(0, 8, 2) for j in range(0, 8, 2)]
2
+ [(i, j) for i in range(1, 8, 2) for j in range(1, 8, 2)])
3
 
4
def draw_squares():
5
'''マス目を描画する'''
6
for i in range(8):
7
for j in range(8):
8
if (i, j) in dark_squares_list:
9
glColor(0.82, 0.55, 0.28)
10
square(i, j)
11
else:
12
glColor(1.00, 0.81, 0.62)
13
square(i, j)

リスト内包表記というものを使っています。

range()の第三引数はスキップで、range(0, 8, 2)の場合「0-7までひとつおき」という意味になります。

さきほどdraw()の中で四角形を描画していた部分をdraw_squares()に書き換えれば、盤面が表示されます。

main.py
1
class Game():
2
...
3
def draw(self):
4
'''描画コールバック'''
5
glClearColor(0.6, 0.4, 0.2, 1.0)
6
glClear(GL_COLOR_BUFFER_BIT)
7
draw_squares()
8
glutSwapBuffers() # 強制描画
盤面

文字を設置

前後左右がわかりやすいように、

の文字を入れましょう。

OpenGL 単体はあまり文字描画に強くない印象ですが、それでも一応間に合ってはいるので大丈夫だと思います。

またやりたくなったら何か手を打つかもしれません。

まずは文字列を描画する関数を定義します。

utils.py
1
def draw_str(x, y, string, font=GLUT_BITMAP_HELVETICA_18, gap=0.25):
2
'''
3
文字列を描画する
4
5
Parameters
6
----------
7
x, y : float
8
描画する座標.
9
string : str
10
描画する文字列.
11
font : , default GLUT_BITMAP_HELVETICA_18
12
フォント.以下から指定.
13
GLUT_BITMAP_8_BY_13
14
GLUT_BITMAP_9_BY_15
15
GLUT_BITMAP_TIMES_ROMAN_10
16
GLUT_BITMAP_TIMES_ROMAN_24
17
GLUT_BITMAP_HELVETICA_10
18
GLUT_BITMAP_HELVETICA_12
19
GLUT_BITMAP_HELVETICA_18
20
gap : float, default 0.25
21
文字間隔.
22
'''
23
for k in range(len(string)):
24
glRasterPos2f(x + gap*k, y) # 描画位置指定
25
glutBitmapCharacter(font, ord(string[k])) # 文字列描画

文字列描画に関してはこちらが参考になります。

情報メディア実験

次にファイルとランクの文字を描画する関数です。

utils.py
1
def draw_file():
2
'''ファイルの文字を描画する'''
3
glColor(1.0, 1.0, 1.0)
4
for x in range(8):
5
draw_str(x, -0.75, chr(x + 97))
6
 
7
def draw_rank():
8
'''ランクの文字を描画する'''
9
glColor(1.0, 1.0, 1.0)
10
for y in range(8):
11
draw_str(-0.75, y, str(y + 1))

chr()は文字の番号をもとに文字に変換するもので、

>>> chr(97) == 'a'
True

となります(ord()はその逆です)。

これをdraw()の中に書き加えていけばOKです。

main.py
1
class Game():
2
...
3
def draw(self):
4
'''描画コールバック'''
5
glClearColor(0.6, 0.4, 0.2, 1.0)
6
glClear(GL_COLOR_BUFFER_BIT)
7
draw_squares()
8
draw_file()
9
draw_rank()
10
glutSwapBuffers() # 強制描画
盤面 文字付き

これで盤面が表示されたので、は駒の画像をこの上に配置していきます!

最後までご覧いただきありがとうございました👋