「普通」の概念を数学する

 

世の中で言われている「普通」という言葉。

文化や環境によって、そして個人によってもこの言葉の意味は変わります。

だとしたら、「普通」というのは、数あるサンプルの中の特定のひとつ【点】を指すわけではなく、

ある特定の特徴をもつ集団【領域】を表していると考えられます。

今回は、「普通」という概念について、ベクトルを使って数学的に考察していきます。


ベクトル?

各サンプルは、それぞれの特徴をもっています。

例えば人であれば、身長、体重、血液型、考え方、…などなど。

これらを要素にもつ配列を、次のようにベクトルとして定義することができます。

$ \vec{v} = (a_1, a_2, \cdots, a_n) $

2次元や3次元のベクトル(要素が2~3個)なら、これを有向線分(矢印)として、

平面や空間上に表現することができます。

ここでは、全サンプルを $S$ として、その中のサンプル $x$ に関するベクトルを

$ \overrightarrow{v_x} = (a_{x,1}, a_{x,2}, \cdots, a_{x,n}) \hspace{2em} (x \in S) $

とします。

ここでは簡単のために、2次元ベクトルを使って考えていきます。

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「普通」とは

「普通」は【点】ではない

10個のサンプルのベクトルを図示したとき、次のようになったとします。

図1 10ベクトル

さて、この中で「普通」なのはどれでしょうか。

客観的に見て「普通」として成り立つ値として考えられるのは最頻値と平均値です。

ご覧の通り、この状態で最頻値というのは意味がありません(すべてが最頻)し、

すべてのベクトルの平均をとっても、平均されたベクトルはどのベクトルにも重なりません。

これはサンプル数を増やせばたまたま重なるベクトルが存在するかもしれませんが、それは全体に比べればごく少数です。

この傾向はベクトルの次元(要素数)が上がるほど強くなります。

これは考えてみれば当たり前のことで、

例えば身長と体重が厳密に等しい人はごく少数です。

これでは「普通」の条件が厳しすぎます。

つまり、「普通」は【点】ではない、ということです。

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【領域】の線引き

【点】ではないということは【領域】を表すということです。

しかし、客観的にこの【領域】の線引きをすることはできません。

それは誰もが恣意的に、つまり好きなように線引きをすることができるわけです。

図2 領域

A さんは青い【領域】を「普通」と定義するかもしれませんし、

B さんは緑色の【領域】を「普通」と定義するかもしれません。

とはいえ、2人とも社会の「普通」にある程度影響を受けた上で「普通」を定義します。


では、社会として「普通」と言われていることは?

社会(もう少し一般的に言えば、グループやコミュニティ)の構成員それぞれが線引きする【領域】の最頻値となるのでしょう。

(これはたぶん平均値ではありません。

例えば、200~400 が普通だと言う人も、1000~1200 が普通だと言う人も、

600~800 を普通だとは言いません。)

最頻値なので、つまりは多数決です。

もし半分に割れてしまったら、「普通」という概念は成り立たなくなります。

(犬派か猫派か?という問題に対して、「普通は犬派だろう」などと言う人はいない。

しかし、カワウソと暮らしている人に対して「普通は犬とか猫だろう」と言う人はいる。)


結論を言うと、あるグループにおける「普通」とは、そのグループの構成員が恣意的に考える【領域】としての「普通」の最頻値である、といえそうです。

だから、あるグループの中で「普通」でないとされていても、別のあるグループでは「普通」だと考えられている、なんてことが起こり得るわけですね。

「普通」は作れる

例えば、カワウソと暮らしている人は他の動物と暮らしている人に比べれば少数であるため、その点「普通」ではないですが、

カワウソと暮らしている人のグループやコミュニティに入れば、それは「普通」のことになります。

日本を含む東アジア人は特に相互協調的で、他者と異なること、すなわち「普通」でないことをよしとしない考えを持つ人が多いです。

しかし、このようにして「普通」を意図的に作ることができます。

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まとめると、個人の「普通」は自由なものであり、それはその個人の所属するグループにおける「普通」にある程度影響を受けています。

そして、グループにおける「普通」は、グループの構成員の多数決で決まります。

このように考えると、「普通」という言葉に対するとらえ方がすっきりするんじゃないかなと思います。

読んでくださってありがとうございました。

では👋